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2025/08/10

【感想☆5】『Z世代化する社会』舟津昌平

 ものすごく面白かったです。例え話として「この病気は『若者であるほど早く感染する』というだけで、実はすべての年齢層に感染するものだった」と筆者が創作するように、若者と距離をとって批判するのではなく、ピュアな若者に影響を与えているオトナにも刃を向ける、責任ある本でした。

 特にインフルエンサーマーケティングと就活ビジネスの負が詳述されます。我々の社会はいかに資本主義に侵されていることでしょうか。ガバナンスの効かない個人・私企業に対して劣勢にあり、自衛が求められているのです。

 すべてのインフルエンサーはモノを売るために存在しています。売るための発信は「誰かが言ってた事実」として社会構成する力を持つため、不誠実な発信が大量になされることは懸念されます。「1年生から就活をしていないとみじめな思いをする」と大学生向けセミナーの台本に組み込む業者は情報の非対称性を利用して、相手を騙すような行動をとる典型です。

 今日、生活するために最低限必要な物質的な「不」の多くは解消されました。このため、不安を創出することでビジネスを成り立たせている輩がいます。いかに節操がなく、余裕のない社会でしょうか。不安も自信も、本来は根拠の無いものです。であればマーケティングに不安を煽られることなく、根拠の無い自信を持って堂々と生きようじゃありませんか。

 読解力テストの結果から、我々は140字程度の文章も読めないことがわかっています。頭が悪いなりに賢くなる努力をすることが必要なのです。認知バイアスもあります。人間は弱い者である。マーケティングに対して劣勢にある。こうした自覚を持つことから始めることが、重要であると痛感させられました。

 また面白いのは、早期離職を防ぐためは、不安の中でいずれ希望を掴めるはずだと思わせることができるかどうかにかかっている、と主張されることです。若者に希望を託すのではなく、大人が若者の希望となることを求められるのです。これは大変ありがたい、夢のある話ではないでしょうか。

 私淑する瀧本哲史さんの著書に『僕は君たちに武器を配りたい』があります。私は、日本の閉塞感を打破するために、また他人に対して優位に立つために、武器が必要なのかと思っていました。しかし『Z世代化する社会』を読んで、不届きな個人や私企業に侵されており、立ち向かうために武器を手にしなければならない、危機的な状況にあることを理解しました。

 Z世代の実態を知るという以上に、今の社会のまずさに気づく、とても良い本です。ぜひご一読ください。



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